巻線の調律シミュレーション (Tuning Simulation of Wound Wire) v0.2.1


変更履歴:
v0.2.1['14/01/30] HTML5版を追加しました。
v0.2['11/11/27] 追記
v0.1['11/02/20]

例えば 極端なインハーモニシティ値を作ってから Curve(曲線 --- 計算方式) で調律のシミュレーションを行うと 対応出来ない範囲が出来てしまいます。

巻線部分のみで傾き(Grade - 曲線)を 0.0から0.09まで 0.01ずつ変えた時のインハーモニシティ値と Tuningのシミュレーションを行ったセント値です。

inha tune0 cent

それぞれの調律曲線で オクターブでの 1〜6倍音の`うなり'を見てみます。
キーは巻線部(1〜28)と少し上まで(35)としています。

part-000.00 part-010.01
part-020.02 part-030.03
part-040.04 part-050.05
part-060.06 part-070.07
part-080.08 part-090.09

では 以前の2オクターブでの Tuningのシミュレーションではどうでしょう?

tune1 cent
part-000.00 part-010.01
part-020.02 part-030.03
part-040.04 part-050.05
part-060.06 part-070.07
part-080.08 part-090.09

一応それらしく見えますが 今一つ実際と合っている感じが持てません。
そこで 新たに別の方法を探してみました。

前回の「調律のシミュレーション」で "オクターブで分割"した場合を突き進めて "巻線部分では全て 4倍音を0"にすると それなりに 調律曲線が出来るように見えます。

tune2 cent

反応はやや大きめですが 巻線の全てのキーで インハーモニシティ値に対応しています。

part-000.00 part-010.01
part-020.02 part-030.03
part-040.04 part-050.05
part-060.06 part-070.07
part-080.08 part-090.09

では 5倍音を 0にするとどうでしょう?

tune2 cent 5
part-5-000.00 part-5-020.02
part-5-040.04 part-5-060.06
part-5-080.08

5倍音が 0で終始しますが 1〜4の倍音の`うなり'は大きくなってしまいます。
そこで特定の倍音を 0にするのではなく 1〜5倍音の`うなり'が等しく少くなるようにして見ます。

tune2 cent diff
part-diff-000.00 part-diff-010.01
part-diff-020.02 part-diff-030.03
part-diff-040.04 part-diff-050.05
part-diff-060.06 part-diff-070.07
part-diff-080.08 part-diff-090.09

それぞれの場合の C4キーでの倍音の`うなり'を見てみます。
いずれも傾き(Grade) 0.05の場合での 計算式・2オクターブ方式・4倍音0・5倍音0・1〜5倍音の平均です。

tune0 c4 tune1 c4
c4 p4 c4 p5 c4 diff

"1〜5倍音までの`うなり'を等しくする"事が 体感的にも数値的にも対応する様に見受けられます。
他のインハーモニシティ値の傾きにも対応するでしょうか?

まず 直線(Straight)の場合です。

inha straight
part-st-010.01 part-st-030.03
part-st-050.05 part-st-070.07
part-st-090.09

対数(Log)型の場合です。

inha log
part-log-010.01 part-log-030.03
part-log-050.05 part-log-070.07
part-log-090.09

基音のみではなく倍音までもインハーモニシティ値の変化に 対応しているのが分かります。


(※ v0.2)追記です。

最小値を探す時のオクターブでの`うなり'の差の変化を見てみます。 (右はその時に合わせたキー全体のセント値です。)
5(Cis)・10(Fis)・15(H)・20(E)・25(A)のキーの場合です。

bass-beat-5 bass-cent-5

x軸のセント値をマイナスから0へと変化させて y軸の倍音の`うなり'の差を見ています。
その一番少い値に合わせる事になります。

10(Fis)キーの場合を取り出してみます。 右は合わせた時の倍音の`うなり'の値です。

bass-10-key beats-5

その時の 10(Fis)キーと22(Fis)キーの間での 倍音の`うなり'の変化を見てみます。 (合わせた値を中央の 0として そこから±20[cent]の範囲で変化させた場合です。)

beat-k2k-5

比べてみると 最小の`うなり'が倍音毎に次々と現れるというよりも `うなり'が少くなっては増加するを何度か繰り返しています。

合わせる倍音を 4倍音までの`うなり'の差としてみます。

bass-beat-4 bass-cent-4

そして 6倍音までとしてみます。

bass-beat-6 bass-cent-6

合わせる倍音を 2から8倍音まで変えた時の 10(Fis)キーでの倍音の`うなり'を見てみます。

partial-beat

高倍音まで合わせる時はセント値はより低くなりますが `うなり'は全体に多くなります。 逆に低倍音で合わせる時は`うなり'は少くなりますが セント値はあまり低くはなりません。
`うなり'の差が1つ以下となる 5倍音(10:5)前後が目安かも知れません。

html5 bass tuning html5 HTML5版です。

以上はシミュレーションですが 実際のピアノでは 打鍵の強さやハンマーの形状や整音状態・ 打弦点


(例えば打弦点1/8の場合と 1/15の場合の倍音の構成は以下のようになります。

dagenten-8 dagenten-15

CDからピアノ音を取り出してFFTで見ると 以下のようになります。 1(A)と25(A)の場合です。

p-izumiko-f a25-fft

5(Cis)-17(Cis)のオクターブでの場合です。)

de.larrocha-fft

・響板の音響特性 の違いなどにより倍音の大きさも異なり 現れ方は様々に変化すると思われますが いかがでしょうか。

参照〉 高音部の調律シミュレーション (Tuning Simulation of Treble Part)

参照〉Java調律シミュレーター (Java Tuning Simulator)

参照〉 低音では 10倍音で合わせる?

参照〉 エンベロープのシミュレーション(Simulation of Envelope)


Dobashi.M
Last modified: 4月 27日 土 17:07:59 2024 JST