調律曲線を求める一つの試み (Tuning Curve Pursuits) v0.1.3


CDの録音からJP(Java Pitch) で調律曲線を求めてみます。

インハーモニシティ値では中音ぐらいで済みましたが 最低音から最高音までの単音があり 録音日も近いもので 勿論同じピアノの使用であれば...との事で C(4)から B(86)まである ドビュッシーの「前奏曲集 第1巻」を選んでみました。

あるCDです。

plotdata-po

また別のCDです。

plotdata-ai plotdata-be

それらしい曲線は見受けられますが タッチの異なる演奏から 一定の音程を取り出す事は無謀です。

そこで ここでも"最小二乗法"を使用してみます。 今回の場合は 3次関数近似 での対応です。

因みに 3次関数は y = a0 + a1 x + a2 x2 + a3 x3 と表される式で aを全て 1とすると 以下の様なグラフになります。

3jisiki

では 先のグラフを 最小二乗法で近似したグラフと表してみます。

lsm3-po

結果は以下になりました。
a0 = 2.7921
a1 = 0.57092
a2 = -0.014626
a3 = 0.000138
他のグラフの場合です。

lsm3-ai lsm3-be

もっとも 明らかに 異常な測定値もありますので...

lsm3-ar0

その場合は 異常値を削除してから再計算を行いました。

lsm3-ar

その A(1)と C(88)の[cent]値から 調律曲線の音程の差を取り出してみます。
測定誤差もありますが 20枚ほどの(1953年から2012年の)CDから 以下のような値となりました。
(v0.1.2) A(49)のインハーモニシティ値と 傾き(Grade)を加えました。

C(88)-A(1) [cent]: A(49)I. : Grade
----------------------------------
45.183 : 0.6413 : 0.0973
26.235 : 0.6085 : 0.0811
36.607 : 0.5986 : 0.0833
30.889 : 0.6261 : 0.0892
32.526 : 0.5531 : 0.0844
28.402 : 0.5797 : 0.0881
47.140 : 0.6020 : 0.0892
46.098 : 0.6107 : 0.0829
24.525 : 0.5913 : 0.0820
46.355 : 0.6058 : 0.0888
37.173 : 0.5771 : 0.0808
62.803 : 0.4988 : 0.0775
43.731 : 0.4198 : 0.0756
37.783 : 0.5870 : 0.0831
34.012 : 0.6082 : 0.0897
26.860 : 0.6138 : 0.0837
60.285 : 0.6382 : 0.0931
34.819 : 0.5829 : 0.0912
42.752 : 0.6011 : 0.0870
30.625 : 0.5952 : 0.0885
30.599 : 0.6310 : 0.0921
31.130 : 0.6189 : 0.0866
51.639 : 0.5994 : 0.0887
47.475 : 0.6211 : 0.0894
------------------------
合計数 24

(v0.1.2) A(49)のインハーモニシティ値と 傾き(Grade)のグラフです。

inha. and grade

傾き(Grade)と セント差のグラフです。

grade and cent-diff

因みに インハーモニシティ値と セント差のグラフです。

inha. and cent-diff

試しに"回帰分析"を行った所 "相関係数 (-1 ≦ R ≦ 1)"は 傾き(Grade)とは 0.060778 A(46)とは -0.177938 と 適合度は小さいですが それだけ 自在な様にも見受けられます...


セント差を 6段階のヒストグラムで表してみます。

histogram-6

10段階のヒストグラムで表してみます。

histogram-10

もう少し細かい 14段階にしてみます。

histogram-14

その中から 小さな値のグラフです。

lsm3-da lsm3-ka

また 大きい値のグラフです。

lsm3-gi lsm3-ke

そこで ハタと考え込んでしまいました。
それに インハーモニシティ値は加えるのだろうか...
一緒に測定してるのだから それを加えればいいのではないか...

...しかし測定値に インハーモニシティ値を加えることは あり得ません。

では 何故これまで 調律曲線のシミュレーションに インハーモニシティ値を加えて来たのかと 云えば あの グラフに近付ける為 ではなかったか...

平均律のチューニング (Equal temperament tuning)/使い方(Usage)/調律曲線

scurve

(v0.1.1)インハーモニシティについて (Inharmonicity)/「ピアノの調律曲線」

p1

そうして これまで繰り返した インハーモニシティ値のシミュレーションと今回の実測から 調律曲線の音程差には 幅がある と云う事が 確認出来た様に思われます。

ではJava 調律シミュレーター (Java Tuning Simulator) から セント値に インハーモニシティ値を加えずに表示して見ます。
始めは 0[cent]の場合です。

cent-0

オクターブ・2オクターブ・カーブ の順です。

cent-octave cent-2octave cent-curve

ノンゼロ・エンベロープ・3和音 の順です。

cent-nonzero cent-envelope cent-triads

これで 3和音型の値が "異常に大きい" から ただの "大きい" に変わりました。

順次 Tuningのシミュレーションを 見直して行く予定です。

(変更履歴:


Dobashi.M
Last modified: 4月 27日 土 19:37:14 2024 JST